Internet Computer は DFINITY Foundation という NPO 組織が開発している, ブロックチェイン技術です. 最近ではいわゆる web3 と呼ばれている技術のひとつです.
ブロックチェイン技術は bitcoin に拠って 2009 年にその実装が初めて運用開始されました. bitcoin はまったく新しい技術というわけではなく, 既存の暗号/合意形成/P2P/ネットワーク技術を寄せ集め, かなり無理をしながらも何とか動くようにした, 「あー, 本当にこれ動かしちゃうんだ」と思わされるような技術でした. (多くの問題を抱えながらも) 今や巨大なインフラストラクチャになってしまったのは, ご存知の通りです.
特にその中核には Proof of Work (PoW) というアルゴリズムがあり, 自分にとってそれは社会的な技術としては「あり得ないもの」でしたし, その一方で bitcoin 以前から タイムスタンピング や IPFS (InterPlanetary File System) のような分散技術の方はに馴染んでたので, 自分と bitcoin にはこれ以上の関係はありません.
bitcoin 以降, 新たに Ethereum というブロックチェイン技術が 2014 年に運用を開始し, これも今では巨大なインフラストラクチャとしてさまざまな活動をサポートしています. Ethereum も PoW を利用していますが, 開発当初から Proof of Stake (PoS) と呼ぶ (よりましな) 別のアルゴリズムに移行するとアナウンスしてきました. しかし, 2022 年 6 月時点では移行はまだ行われていません.
Ethereum のもっとも重要な貢献は Dapps (distributed applications, あるいはスマート・コントラクト) という 「ブロックチェイン上で動くコード」を導入したことです. Ethereum の当時の開発環境は meteor という (当時先進的な) Javascript フレームワークでしたが, 自分でもローカルの testnet 上で Dapps をいくつか作って動かしてみたものです.
Ethereum には, PoS への移行の遅れ以外にも, 内紛によりハード・フォーク (ブロックチェインのリセット) が繰り返されたこと, gas 代 (Dapps を mainnet 上で動かすときに掛かる手数料) がかなり高額でしかも実在貨幣との交換レートが不安定であること, bitcoin よりはましとは言えブロックの追加 (トランザクション) にはかなりの時間がかかること, など多くの問題を抱えています.
今は, ポスト Ethereum と呼ぶべき多くのブロックチェイン・プラットフォームが存在し, それぞれの分野で使われています. しかし, それらのほとんどは技術的には Ethreum を利用, あるいはベースとしたものです.
2016 年に設立された DFINITY Foundation の Internet Computer (具体的には Internet Computer Protocol = ICP という技術. でもすごい名前ですね:-) は, Ethereum が持っていた多くの欠点を補い, より使いやすさを目指したブロックチェイン技術です. bitcoin, Ethereum 以外に IBM 発祥の Hyperledger と言う技術があり, これは bitcoin や Ethereum のようなパブリック・チェインではなく, どちらかと言えば企業向けのプライベイト・チェインやコンソーシアム・チェインをおもなユースケースとしたものです.
イメージとしての Internet Computer は, Hyperleder と bitcoin/Ethereum との中間, 従来のクラウドとブロックチェインの間を狙って, なおかつさらにその先に進もうというブロックチェイン技術だと考えるといいかもしれません.
少なくとも自分にとって Internet Computer が「その先」であると思える理由のひとつは, Internet Computer のスマート・コントラクトのプログラミング言語として, 独自開発の Motoko というプログラミング言語を提供していることです. そしてもう一つは, Internet Computer が本来の「オブジェクト」が棲息できる環境を提供し得るのではないか, という期待です. 前者に関しては, このサイトの Motoko を, 後者に関しては同じこのサイトの オブジェクト棲息圏としての web3 をご覧下さい.
だとしても, 自分もこの Internet Computer 自身がその答えになるとは思っているわけではありません. まだ 2~3 世代の技術的な進歩が必要でしょう. また, ブロックチェインに関する金融絡みの, web3 に関する浮かれたお祭り騒ぎには何の興味もありません. が, 一見無駄に, むしろその将来にとっては障害のように見えるそれらも, もしかしたら必要なステップなのかもしれません.